有栖川有栖

双頭の悪魔(有栖川有栖)感想

作品紹介 まず、著者が書いた同シリーズ「月光ゲーム」「孤島パズル」を読んでいないと、正直マリアやらアリスやらと不思議な名前ばかりでやや状況が察しづらいかも知れないが、彼らは普通の人間であって別にコードネームで呼び合っている訳でもなく、一応作品上での本名だと言うことを先に紹介しておこう。 ただ、作品自体は、本作後書きで著者が語っているように、過去作を読んでいなくても楽しめるように書かれているので、これから読んでも問題なし。 どうやら著者としては「シリーズものだけど、どれから読んでも楽しめる」という点を大事にしているらしく(後書きからもそのことが窺える)、実際のところ私自身シリーズ二作目である「孤島パズル」を読んでから一作目の「月光ゲーム」を読んでいるが、特に支障はなく読めているので、著者のもくろみは思い通りに果たされていると思う。 さて、作品についてだが、この作品は徹底的にフーダニット(犯人は誰だい?)作品である。 そして面白いのは、完全に行き来ができなくなっていて且つ、互いに電話などの連絡初段が絶たれているところ。この状態で引用にある通り、アリス側のキャラクタとマリ
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スイス時計の謎(有栖川有栖)感想

有栖川有栖著『スイス時計の謎』を読了。 四つの短編を収録した本書だが、なんといっても表題作の「スイス時計の謎」が面白かった。 もうこれを読むだけの為に本書を手にとって良いとさえ思ってしまってしまう位である。 もちろん他作も面白くはあるのだが、「スイス時計の謎」を本書の最後に持ってきているためか、やや印象が薄い感があった。 作品紹介 表題作「 スイス時計の謎」では、学生時代の友人サークルのメンバーが記念として揃えて着けている、スイス製の腕時計がキーアイテムとなっている。 その内の一人が殺害されることでメンバーに疑いが懸かるわけだが、その殺害現場に残る重要な証拠として挙げられたのが時計だったのだ。だから「スイス時計の謎」。タイトル付けは至ってシンプルである。 感想(少しネタバレあり) この作品は推理が美しいと思う。 一つ一つ状況を整理し「犯人ならここはこうするだろう、だからそうする必要がないであろうあなたは犯人からはずれる」というような逆説から犯人を絞っていき最終的に一人を導きだす推理シーンはなかなか見応えがある。 また、読者を置き去りにすること
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長い廊下がある家(有栖川有栖)感想

有栖川有栖の短編集『長い廊下がある家』を読了。短編集だし、ちょっとづつ読み進めていこうと思っていたが、結局購入当日に読み切ってしまった。なんだか勿体ない気もするが、それも面白い作品だったということで。 作品紹介 表題作の「長い廊下がある家」に加えて「雪と金婚式」「天空の眼」「ロジカル・デスゲーム」の計4作品を収録した短編集になっている。 表題作に加え、他作品もなかなかバラエティ豊かな印象となっており、どの作品も楽しい謎解きが見られるは同じ。どれか一つは受けるはずだ。 感想(少しネタバレあり) 全体的に完成度が高く、なかなか面白い作品が集められているという感想。 表題作の「長い廊下がある家」もなかなか大胆なトリックが使われていて面白いし、他の作品も楽しめるが、その中でも個人的に好きなのは一番最後に収録されている「ロジカル・デスゲーム」。 相当短い尺の作品ながら、ゲームに負ければ死ぬというスリリングさと、ゲームの提案者が見せた人間くささはインパクト大。これは一読の価値ありだ。 何というか、安心して読めると短編集だと思う。 長い廊下が
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孤島パズル(有栖川有栖)感想

私情ですが自分は今日から夏休みに入りました。 今更かよって感じではあるけれど、夏場のクソ暑い時期に出歩くよりかは今の方が快適なので、まあ良かったのかも。 作品紹介 有栖川有栖の長編シリーズ「学生アリス」の2作目。 前作月光ゲームに続き、クローズド・サークルとなっており、舞台はタイトルの通り。 クローズド・サークル、嵐の孤島ものとか言われるジャンルが好きな人は必読。 感想(少しネタバレあり) 単純明快なタイトル通りの孤島でパズル=事件の謎を解くという王道シチュエーション。 でも味付けは大分濃く、本格的な推理をしつつキャラクタたちの青春の一ページを楽しむ事ができる。面白い。 中身の部分では、主人公一行を孤島に導き事件に巻き込む引き金となったと言える「モアイ像の謎」。 これがとても良い。 よくこんな事を思いつくなあ、という感じで、まさにパズルのような、一つ一つの細かいピースが大きい事象を形成していく。 それにしても、まさか地図がトランスフォームするとは……完成度の高さに素直に驚いた。すげえ。 仕掛け好きな人ならこれだけでも充分満足できる
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ダリの繭(有栖川有栖)感想

キャラクタ同士の軽快な掛け合いが楽しい本格ミステリー。 ダリ髭がトレードマークの有名な社長が、髭を剃られた状態で殺害され物語が展開していくなかなかシュールな出だしではあるが、中身はしっかり本格もの。何故ヒゲを剃られていたのか、もそうだが、他の謎解きもお見事。 名推理に加え、この作品は何故殺人事件が起きたのかという点が掘り下げられていて良い。頭の中で人物相関図を作りながら読むときっと楽しめると思う。 ラストシーンが印象的なので、是非。 ダリの繭 (角川文庫) [ 有栖川 有栖 ] ショップ: 楽天ブックス ¥836 ※価格やショップ情報は楽天のものです 楽天で見る Amazonで探す
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月光ゲーム Yの悲劇'88(有栖川有栖)感想

登場人物がめっちゃ多いクローズドサークル。著者の学生アリスシリーズ一作目。すごく読みやすいんだけど、登場人物を把握するのが大変でページを進んだり戻ったりする羽目に。。 まあでも面白いのは間違いない。 感想(少しネタバレあり) この『月光ゲーム』はとにかく各キャラクタの事件に対する意見がよく飛び交い、読者の持っている考えを二転三転させてくれたように思う。 主人公が所属する推理研究会のメンバーたちは海外の大物作家が用いたロジックを引用して語ったりするわ、やたら詳細なミステリ談義もするわで、とにかく説得力が強いメンバーたち。 今作では他の大学と一緒に事件に巻き込まれているので、その手のネタには詳しくない人物が寧ろ多いのだが、臆すること無く自分の意見をぶつけていていく。 様々な角度から推理が行われ、これがエキサイティングで面白い。 誰の考察においてもある程度納得してしまう部分があるので、読者の考えも行ったりきたりしてしまうわけだ。 10人を超える大人数で和気藹々と、それこそ学生らしい楽しみ方をしていた彼らに起きる悲劇。 小説として面白いのはもちろんのこと、
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