小説

人形館の殺人(綾辻行人)感想

取っ付きやすさ: トリック: ストーリー: [show_book_information isbn=9784062767163] 作品紹介 十角館、水車館、迷路館とこれまでシリーズ三作を読んできたが、今作人形館はこれらの作品とは毛色が違う印象。館シリーズはいづれもとっつきやすさみたいなものがあったが、今作はそうじゃないかも知れない。 もともと「人形館」を所持していた男が自殺し、男の息子である飛龍想一が父の遺した「人形館」に引っ越してくる所からこの物語は始まる。 いままでのシリーズにおいても、もとの所有者が亡くなったことで「×××の館」に関わることが多かったので、これまでシリーズを読んできている方なら、またか、と頷くに違いない。しかし、そこで起きることは、これまでの館シリーズとは大きく志向が変わっている。 シンプルに読みやすい、面白い!と他の人に勧めるのであれば、まあ前作たちなのかなと。 感想(少しネタバレあり) 前作までの館における連続殺人事件は言わば復讐劇。抑えきれなくなった憎悪が惨事の引き金となっ
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龍神の雨(道尾秀介)感想

取っ付きやすさ: トリック: ストーリー: [show_book_information isbn= 9784101355535] 感想(少しネタバレあり) 実を言うと、代表作『向日葵の咲かない夏』を読んだとき、面白さよりも気持ち悪さが上回ってしまい、以来道尾秀介の作品には悪いイメージが付いてしまっていた。 一度定着した印象というものは悪いものほど中々拭い去る事ができず、結局「向日葵の咲かない夏」を読んでから著者の他作を手に取るまで早数年経ってしまった訳である。 しかし本作に込められたメッセージもあって、これまで代表作しか手にとっていないのにも関わらず「この人の作品は自分に合わない」と勝手に憶測していたことを少し反省することとなった。 「龍神の雨」は純粋に面白いし、テーマもしっかりしている作品だったからだ。 道尾秀介は、この作品のテーマとして運命を、モチーフとして龍を用いている。巻末の解説によれば、インタビューでこう答えているそうだ。 運命というのは、誰もその姿を実際に見たことはなく、巨大で荒々しい。そ
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双頭の悪魔(有栖川有栖)感想

取っ付きやすさ: トリック: ストーリー: [show_book_information isbn=9784488414030] 作品紹介 まず、著者が書いた同シリーズ「月光ゲーム」「孤島パズル」を読んでいないと、正直マリアやらアリスやらと不思議な名前ばかりでやや状況が察しづらいかも知れないが、彼らは普通の人間であって別にコードネームで呼び合っている訳でもなく、一応作品上での本名だと言うことを先に紹介しておこう。 ただ、作品自体は、本作後書きで著者が語っているように、過去作を読んでいなくても楽しめるように書かれているので、これから読んでも問題なし。 どうやら著者としては「シリーズものだけど、どれから読んでも楽しめる」という点を大事にしているらしく(後書きからもそのことが窺える)、実際のところ私自身シリーズ二作目である「孤島パズル」を読んでから一作目の「月光ゲーム」を読んでいるが、特に支障はなく読めているので、著者のもくろみは思い通りに果たされていると思う。 さて、作品についてだが、この作品は徹底的にフーダニット(犯人は誰だ
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メドゥサ、鏡をごらん(井上夢人)感想

取っ付きやすさ: トリック: ストーリー: [show_book_information isbn=9784575232905] 作品紹介 SF風味が強い著者だが、これは正しくホラー。作中の主人公の感じる違和感、不安が良く描かれており、精神的に疲弊し判断力が鈍ってゆく主人公同様に読者の混乱も誘う構成力は相変わらずだと感じた。 表題を見てみよう。メドゥサ、と言えばギリシア神話に登場する怪物であり、「見たものを石に変える」ことで有名だ。そして、鏡はメドゥサが絶命した原因となったもので、どちらもギリシア神話からとったパーツになる。 表題の意するところは、元々は美しい容姿でありながら、アテナの怒りを買い醜い姿へ変えられてしまったメドゥサに対し「自分の姿を見ろ」。酷な仕打ちである。そしてそのタイトル通り、作品の内容も暗く重くなっている。 感想(少しネタバレあり) 自身をコンクリート固め=石化して亡くなった男と残された「メドゥサを見た」という遺言。とんでもなくホラーで理解しがたいシチュエーションな作品である事がうかがえる。
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密閉教室(法月綸太郎)感想

取っ付きやすさ: トリック: ストーリー: [show_book_information isbn=9784062760270] 作品紹介 タイトルに教室ついているとおり、ある学校で起きた生徒の怪死をその同級生である工藤順也を通して追っていくストーリーてい。作中のキャラクタ達からも、法月綸太郎の処女作という所からも年齢相応の勢いを感じられる作品で、推理小説としては比較的読みやすい作品であると思う。 すごい話が飛ぶけど、高校までの教室は教室感あったけど、大学は全然そんなことないよね。不思議だね。そもそも自分の教室とかないし、そりゃあそうなのかもだけど。 感想(少しネタバレあり) 個人的に良かった点を挙げるなら、この作品のメインとも言える「教室から消えた机と椅子の謎」のロジックだろう。わざわざ1クラス分の机と椅子を他の場所に移動した理由は最後まで読めば納得できるし、同時に良くこんなに大がかりな事を考えついたなあと感嘆。 しかし、事件の犯人が二転三転したせいか、見事な真相隠しが読者の意識から離れてしまう感があるのがや
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ねじれた家(アガサ・クリスティ)感想

取っ付きやすさ: トリック: ストーリー: [show_book_information isbn=9784151300875] 作品紹介 「そして誰もいなくなった」で有名なアガサクリスティの著書の中では、やや知名度的に劣る印象はあるものの、1949年の刊行から世界中で読まれている本作。 そして誰も~は王道的なクローズドサークル、次々と起こる連続殺人で息つく間もないテンポの良い展開が見どころだったが、「ねじれた家」は第一の殺人(とは言っても表向きには事故とかに見えなくもない)から物語が始まり、次の事件が起きるまでに長くの時間を要し、その分、人物像にスポットが当たるのが見どころだろう。 感想(少しネタバレあり) そこで語られるのは裏表紙でも紹介されている、ねじれた家のねじれた人物たちの人物像。その家に関わる人間全てが汚れていて、なんとなく怪しい。誰が犯人でも驚かない。資産家の父を殺害する理由は家族誰にもありそうな……とまさに先が読みづらい展開となっている。 なんせ、物語後半までは次の事件も起きず主人公である男がひ
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水車館の殺人(綾辻行人)感想

取っ付きやすさ: トリック: ストーリー: [show_book_information isbn=9784062760324] 作品紹介 綾辻行人氏の通称「館シリーズ」の二作目となる本作。シチュエーションの細かいところはもちろん異なるものの、今作においても、前作「十角館の殺人」に続きクローズドサークルが基盤となっている。 今作の面白い所は、過去に起きた事件の解決を基本線にストーリーが進行していく点であり、作中の「現在」より一年前に起きた事件の際に「水車館」に居合わせたメンバーが集結し、そこに前作に登場したキャラクタを加え、過去の考察をしていく流れとなっている。 感想(少しネタバレあり) ストーリー中盤くらいまではひたすら過去を追っている風で進んでいき、中盤以降になってくると過去と現在が一気に近づく。ラストではピタリと重なるようになっており、このハマった感はお見事。 また、綾辻氏が後書きで記していたように、ある程度情報が与えられ推理はできるが、決して確信を得られるまではいかない。ミステリファンの方ならいろいろ想
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