小説

クリムゾンの迷宮(貴志祐介)感想

作品紹介 今までミステリーばかり紹介してきたこのブログでは珍しく「ガチガチ」なホラー作品。思い返してみるとホラー的な作品は結構紹介しているような気もするが、基本はミステリーにカテゴライズされていた作品が多かった訳で。 そんなわけだが、私自身ミステリやらホラーのジャンルの括りがイマイチ分からなかったりするので、これからは大雑把に振っていこうと思う。 まあ、そんなことはさておき。 本作はバトルロワイヤルもの、とでも言えばいいんだろうか、とにかく、極限状態の中で最後まで生き残ることを目標として参加者が協力したりだまし合ったりする話である。 映画やら漫画やらでよく見かけるシチュエーションではあるが、そこは「黒い家」でホラー大賞を受賞した著者の筆力。 作中に登場するゲームブック(多分自分の世代がギリギリ知っているレベル)の内容にあたかも沿ったかのように進行させるアイデア、生々しい人物描写はとってもホラーであり、緊張感抜群。ありきたりじゃ終わらない。 感想(少しネタバレあり) 読んでいるときは「面白い!」、読み終えれば「面白かった!」、娯楽小説はこうあるべきという
やまぐろ

ダレカガナカニイル(井上夢人)感想

作品紹介 著者が、徳山諄一とのコンビである岡嶋二人として『クラインの壺』を発表したのち、ソロデビューを果たしたのがこの作品だ。 いやにホラーテイストを感じるタイトルだが、少し読み始めるとこのタイトルが”どストレート”である事にすぐ気がつく、いかにも井上夢人らしいSF要素が盛り込まれたミステリーになっている。 なんかタイトルでこれを思い出したのは内緒の話↓ 「やっぱり…、嘘だったんじゃないですか…、中に誰もいませんよ」 感想(少しネタバレあり) 新興宗教団体の警備にあたることとなった男を視点に物語は展開していくのだが、この男がことごとく運がない。 なんせ、ただでさえ面倒な職場に飛ばされたその日のうちに、警備していた団体で謎の火災が起き、警備の依頼人である教祖が死亡し、結果として自身はクビである。 そして更に、この火災事件をきっかけに「見知らぬ女性の意識」が男に内在してしまうという、まさに踏んだり蹴ったりな状況に見舞われてしまう。 男は当然その状況に混乱し、「自分は狂ってしまった」と嘆くが、対する女性側は結構楽観的だったりするのが読んでいて面白い。
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仮面病棟(知念実希人)感想

作品紹介 作家であり医師である知念実希人の医療ミステリー「病棟シリーズ」の1作目。2020年に映画化している作品なので、もしかするとそっちで知っている人のほうが多いかもしれない。 外科医の男「速水秀悟」が良くわからんピエロのお面を被った男に、怪我した女性を治療するよう依頼され、治療後そのまま病院に監禁されるような形となる。 本作は閉じ込められた病院からの脱出方法、病院の秘密、そしてピエロ面の男の犯行動機を探っていくストーリーだ。 感想(少しネタバレあり) ストーリーで取り扱っているものはだいぶシリアスで重い内容ではあるが、テンポよく展開していき、徐々に情報が与えられるので、飽きることなく読み進めることができた。 ストーリーの肝である病院で恒常的に行われていた非人道的な所業はなかなかのインパクトで、これを作品として世に送ったのが医師の肩書を持つ人というのもなかなか。 また、登場人物たちのいつ殺されるか分からない恐怖感、なによりそれぞれの登場人物たちが持つ秘密が明かされる緊張感が、比較的重たくないテキストで描かれており、作品が暗くなりすぎないようになっているの
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八つ墓村(横溝正史)感想

作品紹介 探偵「金田一耕介」が活躍するシリーズの続編である本作。 作品のタイトルにもなっている人里離れた山村「八つ墓村」を舞台に、その土地特有の因習になぞらえた連続殺人事件をテーマにした作品になっている。 とにかくよそ者に厳しい閉鎖的な空気は、稲川淳二だったら村に入った瞬間に「嫌だな~怖いな~」と言ってしまうであろう程だ。いや、突然「いるっ!」と叫び出すかも知れない。 ちょっと昔だと「ひぐらしのなく頃に」とか、最近だと「ガンニバル」とかが、シチュエーションが似てる感じか。 どの時代でも人を惹きつける要素ってのは変わらないのかも知れない。 感想(少しネタバレあり) 怪談の人とかともかく、『八つ墓村』はなかなか読み応えのある作品だ。推理要素あり、ホラー要素あり、恋愛要素もあったりする。 その中でも一番色濃いのはやっぱりホラーだろう。 設定からして、もう色々と怖さを引きたてる。八つ墓村の由来になったと言われるている、村人たちによる八人の武者殺し。 これが村に「祟り」をもたらした原因と伝えられており、その首謀者の末裔が本作の主人公になるのだ。しかも、主人
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誰彼(法月綸太郎)感想

作品紹介 著者の前作である「雪密室」から続く、小説家法月綸太郎シリーズの続編がこの『誰彼』だ。 本作は、表題が示す通り「誰が」という点にスポットを当てて描かれており、密室殺人の解に拘った前作とは毛色が違う作品になっている。 感想(少しネタバレあり) この作品の面白さはジェットコースターさながらのストーリー展開にあると思う。 状況が目まぐるしく変化していくため、その都度探偵役の法月綸太郎が混迷し、当然読者も一緒に振り回される形になる。なかなか事件の真相が見えて来なく、常に先のページが気になる展開であるので、読者はいつの間にかストーリーに没入してしまう。 ただ人によっては、この作品にある変化の多さをやり過ぎだと感じてしまうかも知れない。どうしても繰り返し変化が起きると、人は飽きたり疲れたりしてしまいがちだ。 ジェットコースターを例にあげよう。ジェットコースターというのは乗っている間は楽しいアトラクションであるが、何度も繰り返して乗りたくはない乗り物ではないだろうか。 それは度重なる変化に、それまで面白いと感じていた身体が、変化に慣れてしまう事が原因であると
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アクロイド殺し(アガサ・クリスティ)感想

作品紹介 作品のメインの視点はシェパードという医者を生業とする一人の男。この人はなんというか、一応物語のメインであるにもかかわらず他の人物と比べて個性が薄いような気が。 典型的な生真面目さんというか、とにかく言葉を選ぶのにも慎重で感情の抑揚もあまりないように見える。 「仮にもメーンなんだから、最後にはデカイ仕事してくれるだろう」そう思い読み進めていましたが。。彼はやっぱりデカイことをしてくれましたね。まあ彼の功績は読んでみてってことで。 なんか人物紹介になってしまった。 感想(少しネタバレあり) なんだかんだで、かなりの衝撃を受けた作品。 「そして誰もいなくなった」を読んだときも感じたが、、この人はキャラの個性を作るのが上手。 よくよく考えれば、個性が強い人間が揃う今作に置いて、シェパード医師の「普通に堅実な感じ」は個性として充分成り立つように思う。 期待を裏切らない活躍っぷり。シェパード医師は「主人公」としての役割を十二分に果たしてくれた。 そして、シェパード医師と双璧を成す、アガサ作品においての重要人物であるポワロ氏。このポワロというキャラ
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鍵のかかった部屋(貴志祐介)感想

貴志祐介氏の「鍵のかかった部屋」を読了。 いかにも密室っぽいタイトルの本作は短編集となっていて、出勤時とかに読むのにちょうど良い。 作品紹介 本作は密室殺人を取り扱った短編が4本収録されている。 「佇む男」「鍵のかかった部屋」「歪んだ箱」「密室劇場」いずれもキーパーソンとなるのは、やたらと「鍵」に詳しい男、榎田と女性弁護士である青砥。 この二人が事件に関わることで、いかにも自殺に見える殺人の実態を暴いていく、というのが本作共通の筋となる。 感想(少しネタバレあり) 何も知らずに読んだ自分としてはこの二人がキーパーソンである事は三作目の「歪んだ箱」辺りで分かったわけだけど、これらの中でも一作目の「佇む男」はかなり自分好みのシチュエーシだった。 人里離れた山荘で資産家の社長が遺言を残し自殺した事件の裏を探るお話。密室の状態も、トリックもなかなか楽しめた。 犯人はハナから明確だったし、トリック自体もよみ易かったりするので、考えを巡らせながら読む楽しさが味わえるかと思う。 二作目以降のお話もなかなか面白くはあったけれど、徐々に物足りなく感じてしまった
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