小説

バイバイ、エンジェル(笠井潔)感想

笠井潔著『バイバイ、エンジェル』を読了。なんだか青春を感じる可愛らしい表題ではあるけれど、れっきとした推理小説だ。 作品紹介 割とキャッチーなタイトルではあるものの、実はけっこう昔の作品で1979に刊行された作品となっており、著者のデビュー作でもある。 刊行当時のパリが舞台となっている。パリおしゃれ。行ってみたい。 感想(少しネタバレあり) パリの資産家であるラスール家を中心に起きる殺人事件を、日本人留学生矢吹駆が紐解いていくのだが、この探偵役がなかなか面白い。 とにかくニヒルで捉えづらく、哲学的な台詞を並べまくる。説得力抜群の物言いで警察までも虜にしてしまう。魅力的なキャラクタだ。 この作品の見どころは、この矢吹の言葉一つ一つにあると自分は思っている。 物語の初めにおばさん姉妹の片割れが「首なし死体」となって発見され、ストーリーの重要ポイントになるのだが、この「首斬り」についての彼の解釈、また事件の解答が印象的であった。 首のない死体はミステリにおいてよく使われるネタで、大体は被害者のすり替えに理由があったりし、実際にこの作品においてもすり替え
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罪と罰(ドフトエフスキー)感想

ドストエフスキー著、工藤精一郎訳の『罪と罰』を読了。部屋の掃除してたら大学生の時に友人に貰ったものが発見されたので、久しぶりに読んでみた。上下巻で1000ページほどの作品で読むのに時間がかかってしまったが、遂に読破。流石に一日で読みきるのは無理だった。 一応ミステリーというカテゴライズはされていないような気なするので、トリックのとこは0点にしてしまったけど、考えさせられる、と言う部分においてはではミステリーと同じなんじゃないだろうか。 作品紹介 この作品を一言で紹介するならば「殺人を犯した青年が心身共に追い詰められていく、道徳的ジレンマを描いた作品」といったところだろう。 しかしながら、その一言では語れない魅力があるのが本書『罪と罰』だ。 感想(少しネタバレあり) ストーリーの中心にあるのが殺人を犯した男の苦しみであることに間違いはない。 だが、その男の唯一と言える友人とのストーリー、家族とのストーリー、ある女性とのストーリーと、主人公ラスコーリニコフと関わる人物についての描写も濃く描かれており、なんとも捉えづらい。 言い換えればそれだけ自由のある作
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そして誰もいなくなった(アガサ・クリスティ)感想

“ミステリの女王”の異名を持つアガサ・クリスティの有名作、”そして誰もいなくなった”。 自分がどうこう言わんでも、超有名作品だし、最高クラスに評価されている作品ではある。タイトルが秀逸だよなあ、名作はここからして違うわ。 20年ぶりくらいに読んだけれど意外とストーリー覚えてたから、やっぱり面白い作品なんだと思う。 作品紹介 イギリスで1937年に生まれた本作。 アガサ・クリスティの作品は数あれど、その中で最も世界中で売れている作品となっている。もちろん評価も高く、この作品に影響を受けたと言われる作品はとても多い。 本作はインディアン島という孤島に集められた10人が童謡に見立てた連続殺人事件に巻き込まれていく、という代表的なクローズドサークルの作品となっている。孤島、館、童謡殺人とミステリファン垂涎のシチュエーション。 特にこのジャンルが好きな人なら必読だ。 感想(少しネタバレあり) 結論から言えば、名作の評価に違わず、この作品は何度読んでも面白かった。読み始めたら、最後のページを捲るまで本を閉じることが出来ないくらい。 この作品はとにかく心情
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隻眼の少女(麻耶雄嵩)感想

麻耶雄嵩著『隻眼の少女』を読了。 刊行がスマホが流行り始めた2010年の作品と言うこともあり、表紙が結構近代的で(な気がする)、割と取っつきやすそうなイメージを持っていたが、期待通り読みやすい作品だった。 2010は自分はまだ大学生。年取ったなあ。 作品紹介 2011年度に日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞をダブル受賞している作品。 やっぱり時代が新しめだからか、けっこう登場人物のキャラクター性が強く、特に探偵役である御陵みかげはインパクト大で覚えやすい。 観光当時、時代的にかなりラノベが流行っていた時代だったので、その流れを組んで美少女探偵というキャラクタを生み出したのかも。知らんけど。 感想(少しネタバレあり) 先に書いてしまったけれど、とにかくキャラクタの個性が強い作品。このキャラクタを好きになれるかどうかでだいぶ作品の評価が変わってくるのではないかと思う。探偵役に若い女の子を使ったのは近代的というかなんというか。 加えて文体も比較的柔らかいため、ミステリを手に取ったことの無い人の入り口には持ってこいなのではと感じた。 ミステリとして
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赤い森(折原一)感想

折原一著『赤い森』を読了した。この人の作品は雰囲気が独特でなんとも言えない狂気を感じるが、でこれも例に漏れず。森の中に佇む曰く付きの山荘を舞台にした、いかにもホラーな雰囲気は夏休みにうってつけだ。今はゴリゴリの冬だが。 作品紹介 著者の「樹海シリーズ」と呼ばれる作品群に新たに書き下ろした「赤い森」を加えた三部構成となっている。折原一はかなりハイペース且つ多くの作品を生み出しているが、その中でも比較的新しめの作品。 著者の作家でデビューが1988年とのことで、自分が生まれた時から作家として活動しづつけている。35年。すごい。 感想(少しネタバレあり) 折原一と言えば叙述トリック。しかし残念だが、本作においては、自分の予想を超えてくる面白さはなかったというのが正直な感想。 しかしながら章を追う毎に真相が分からなくなってくる、読者の不安を煽る構成は秀逸であり、著者らしい暗く歪な世界観を存分に味わえる作品だろう。 面白いか面白くないかで言うなら、面白い作品であると思うが、折原一の作品としての物足り感はやっぱり否めないか……という印象。 赤い
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モルグ街の殺人事件(エドガー・アラン・ポー)感想

史上初の推理小説として著名である、エドガー・アラン・ポー著『モルグ街の殺人事件』を読了。物語の真相にはかなり呆気をとられたが、それまでの推理シーンにはこだわりを感じたし(人物の素性などは細かく描かず、ひたすら事件の解明に焦点を当てている)、面白く読める作品だった。 作品紹介 先に述べてしまったけど、史上初のミステリ作品とされており、また史上初の密室殺人トリックを利用した作品として知られている。まさに原点として頂点。 そう言えばポケモンのサトシシリーズ終わるらしいけど、ピカチュウ今レベルいくつなんだろう。金銀のレッドは80だった気がするけれど。 感想(少しネタバレあり) 現代でこそ、この作品の真相は「そんなのあり!?」となるところだろうが、現場に残っている証拠から真相を導き出し、読者に驚きを与える結末が用意されているのは現代の推理小説と同じである。 1841年から現代まで様々な形で進化を遂げてきた、推理小説というジャンルの基盤を作り上げた彼の功績は計り知れない。ありがとうポー! ちょっと話が逸れるが、これだけ歴史のある作品を紙でなく、電子書籍で読めるのは結
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長い廊下がある家(有栖川有栖)感想

有栖川有栖の短編集『長い廊下がある家』を読了。短編集だし、ちょっとづつ読み進めていこうと思っていたが、結局購入当日に読み切ってしまった。なんだか勿体ない気もするが、それも面白い作品だったということで。 作品紹介 表題作の「長い廊下がある家」に加えて「雪と金婚式」「天空の眼」「ロジカル・デスゲーム」の計4作品を収録した短編集になっている。 表題作に加え、他作品もなかなかバラエティ豊かな印象となっており、どの作品も楽しい謎解きが見られるは同じ。どれか一つは受けるはずだ。 感想(少しネタバレあり) 全体的に完成度が高く、なかなか面白い作品が集められているという感想。 表題作の「長い廊下がある家」もなかなか大胆なトリックが使われていて面白いし、他の作品も楽しめるが、その中でも個人的に好きなのは一番最後に収録されている「ロジカル・デスゲーム」。 相当短い尺の作品ながら、ゲームに負ければ死ぬというスリリングさと、ゲームの提案者が見せた人間くささはインパクト大。これは一読の価値ありだ。 何というか、安心して読めると短編集だと思う。 長い廊下が
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