魍魎の匣(京極夏彦)感想

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京極夏彦著『魍魎の匣』を読了。上中下巻併せて1000Pを超えるボリュームで語られる本作は、全体的に和風で妖しげな雰囲気を放っており、個人的にはかなり好みのテイストだった。

書籍情報

           
タイトル文庫版 魍魎の匣
著者京極 夏彦
出版社講談社
発売日1999年09月
商品説明匣の中には綺麗な娘がぴったり入ってゐた。箱を祀る奇妙な霊能者。箱詰めにされた少女達の四肢。そして巨大な箱型の建物ー箱を巡る虚妄が美少女転落事件とバラバラ殺人を結ぶ。探偵・榎木津、文士・関口、刑事・木場らがみな事件に関わり京極堂の元へ。果たして憑物は落とせるのか!?日本推理作家協会賞に輝いた超絶ミステリ、妖怪シリーズ第2弾。
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目次

作品紹介

本作品「魍魎の匣」(もうりょうのはこ)は、京極夏彦の百鬼夜行シリーズの第2弾であり、第49回日本推理作家協会賞の受賞作品となっている。

メディアミックス作品が多い作品であり、映画化、アニメ化もしている人気作品だ。

シリーズの主人公が営む古本屋の屋号から、京極堂シリーズとも呼ばれているので、人によってはこっちの方が馴染みあるかも知れない。

感想(少しネタバレあり)

本作は、とにかくストーリーの運び方が絶妙だと思う。序盤は淡々と語られていき、ゆっくりと時間をかけて読者を作品に引き込んでゆく。

序盤で、特に印象に残ったのは、物語が始まる鍵となった二人の少女の心理描写が細かく描かれている点。同棲の友人に対する、憧れ、羨望、友人である事への喜び、誇り……少女の不安定な心の動きは、見ているだけで読者の不安を煽り、良くないことが起こる予兆を感じさせるものであったし、そうなれば自然と先が読みたくなるのは当然の流れだ。

この心理描写の細かさはそのままキャラクタの個性に繋がるので、ストーリーに入り込み易くもなる。ある程度読者の興味を引いたところで、物語が段々と、良からぬ方向に動いていくのだ。

そして、終盤の展開は見事だった。一気に事態が進展していく様子は非常に緊迫感あふれるものであり、この辺りは本当に読んでいて面白かった。作中の謎が立て続けに明かされていくのに、探偵役の京極堂はまだ隠している秘密があるという。

そんな事を言われては、本を閉じるわけにもいかなくなってしまい、物語の疾走感にとらわれるままに物語が結末を迎えるまで一気に読む他なかった。

結末において、ある男の生き方が示されている。事件については、探偵役の京極堂、語り手である小説家関口、その他登場人物にとっては各々納得できないものとなってしまったが、その男はハタから見て歪ではあるものの幸せを掴むことに成功しているのだ。

しかしながらその男こそ、京極堂が言う「境界線」を超えてしまった人物であろう。そして、そんな彼の生き様を見て羨ましいと思ってしまう関口こそ「境界線」である「魍魎」そのものであるのかも知れない。

作中で起こる事件がとってもサイコでありながらも、作品の持つ妖しさが猟奇性すら美しく見せてしまう。

そんな不思議な魅力のあり、時間があるときにじっくりと読んで欲しい名作だ。

やまぐろ
システムエンジニア
SESで業務アプリケーション開発、エンドユーザ向け機能などの開発に携わっている文系(経営学)卒エンジニア。
当サイトでは読書記録を残したり、ガジェットのレビューをしたりしています。
たまにエンジニアっぽい記事を書いたりすることも。
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